用語集・解説

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内田増幸の食べ歩き日記に登場した古典フレンチの技法・ソース・食材・シェフを体系的に解説します。

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Cromesquis
クロメスキ
料理
起源 18世紀・ヴェルサイユ宮殿(約250年前)

古典フレンチの前菜またはアミューズとして供されるコロッケ状の料理。小さなサイコロ型の衣の中に、フォワグラやトリュフの濃縮エキスを封入し、噛んだ瞬間に熱い液体が溢れ出す劇的な一品。

名称はポーランド語の「クロミェスキ(krokiet)」に由来するとも言われ、フランス王室の厨房で洗練された。現代では絶滅危惧種ともいえる古典料理の一つ。トレフ宮本では10日間かけて丁寧に製造される。

Sauce Salmis
サルミソース
ソース
系統 フランス古典料理 / ジビエ専用ソース

ジビエ(狩猟鳥獣)専用の古典的ソース。鴨・鳩・雉などを半焼きにした後、骨や内臓を叩いてブイヨンや赤ワイン・コニャックと長時間煮込んで濾したもの。

この「内臓も無駄なく使い尽くす」という考え方が古典料理の真髄であり、現代の料理では失われつつある技術である。内田氏は「古典的スタイル、本当に美味しく懐かしい」と評した。

Sauce Poivrade
ポワヴラードソース
ソース
系統 フランス古典料理 / ジビエ用ペッパーソース

胡椒(ポワーヴル)を主体とした赤ワイン系の古典ソース。マリナードの残り汁(酢・赤ワイン・ミルポワ)を煮詰め、スポンジドミグラスと胡椒を加えて仕上げる。

鹿・猪・ノウサギなどジビエ全般に合わせられる。辛口でスパイシー、かつ肉の野性味を引き出す力強い風味が特徴。トレフ宮本では仙台牛の鹿肉にポワヴラードとソース・サヴァイヨンの2色ソースで提供。

Gougères
グジェール
料理
起源 ブルゴーニュ地方・シュー生地のチーズ焼き菓子

シュー生地(パート・ア・シュー)にグリュイエールやコンテなどのチーズを加えて焼いた、フランス古典料理のアペリティフとして定番の一品。ひと口サイズで軽く、シャンパンやワインとの相性が抜群。

日記に登場する各店では独自のアレンジが見られる。ラ・ジュネスでは蟹・ホタテ・サーモンの3種のフィリング入りグジェールを提供。トレフ宮本では鶏の白レバーを詰めた大ぶりグジェールを供した。

Foie Gras
フォワグラ
食材
産地 ガスコーニュ・ペリゴール地方(フランス南西部)が主産地

ガチョウまたは鴨を肥育(ガヴァージュ)して肥大化させた肝臓。フランス料理の「高級三大食材」のひとつ(他はトリュフ・キャビア)。ミルク色で滑らか、特有の豊かな甘みと旨みを持つ。

テリーヌ・エスカロップ・ポワレなど多様な調理法がある。ラ・ジュネスではアラン・シャペルのレシピによる新栗とタピオカのクリームスープにフォワグラのガトー仕立てを添えて提供。ロドラントではコーンスープに沈めてカフェのような香りを対比させた。

Terrine
テリーヌ
技法
系統 中世フランス料理 / 保存技術から発展した調理法

陶製の型(テリーヌ)に肉・魚・野菜のファルスや層を詰めて焼成・冷却する料理。もともとは食材の保存を目的とした調理法だが、現代では繊細な断面の美しさを競う古典料理の花形的存在。

ラ・ジュネスで供されたジビエのテリーヌは雉・鳩・イノシシ・鹿の4種をモザイク状に組み合わせたもので、断面に大理石状の模様を作り出す高度な技術を要する。梨・柿・リンゴ・巨峰・梅干しのピクルスを添えて。

Alain Chapel
アラン・シャペル(1937–1990)
シェフ
出身 リヨン近郊・ミオネ(ブレス地方)

20世紀フランス料理の巨星。ポール・ボキューズ、トロワグロ兄弟らと並ぶヌーヴェル・キュイジーヌの担い手でありながら、古典の技法と素材への深い敬意を持ち続けた。ミシュラン三ツ星を長年保持。名言「料理は愛だ(La cuisine, c'est beaucoup plus que des recettes)」でも知られる。

神戸ポートピアホテルに「アラン・シャペル」の名を冠したレストランが設けられ、シェフ・小久江次郎(後のラ・ジュネス)、佐々木康二(後のプレスキル)ら日本の名シェフを育てた。

Gargouillou
ガルグイユ
料理
考案 ミシェル・ブラス(1978〜)/ オーブラック高原(フランス中部)

世界で最も模倣・オマージュされた現代フランス料理の一皿。20〜60種類以上の野菜・ハーブ・花をそれぞれ最適な火入れで調理し、皿の上に風景のように配置するもの。「畑から皿へ」という思想の象徴的料理。

ガルグイユはオーブラック方言で「野菜のごった煮スープ」を意味する。ブラスはこの素朴な農家料理を現代的芸術に昇華させた。本アーカイブが扱う古典フレンチとは系譜が異なるが、日記には複数の「野菜を主役にした前菜」が登場しており、その精神は共鳴している。

Consommé
コンソメ
技法
起源 フランス古典料理(17〜18世紀)。エスコフィエにより体系化

牛・鶏・ジビエなどのブイヨンをクラリフィカシオン(清澄化)で透き通らせた澄まし汁。挽き肉・卵白のいかだが濁りを吸着し、液体を通して底の文字が読めるほどの透明度が基準。

「ダブル・コンソメ」は旨みを極限まで凝縮させた版。浮き具材の種類で名前が変わる(ジュリアン・セレスタン・ブルノワーズなど)。

Sauce Béarnaise
ベアルネーズソース
ソース
起源 1837年頃 / パリ近郊 Saint-Germain-en-Laye の料理人が考案

タラゴン・エシャロット・ビネガーのリダクションに卵黄とバターを乳化させた温製ソース。オランデーズの一族。グリル・ローストした牛肉の古典的付け合わせ。

派生:トマト追加 → ショロン / 肉汁追加 → フォワイヨ。

Sauce Grand Veneur
グランブヌールソース
ソース
起源 古典フレンチ / 名称は「Grand Veneur(王室の猟騎士長)」に由来

ポワヴラードにクリームとカシスジュレを加えた格上のジビエソース。鹿・イノシシ・野ウサギなど哺乳類ジビエの最高峰。

Confit
コンフィ
技法
起源 南西フランス(ガスコーニュ・ペリゴール)の食材保存技術

低温の鴨脂・豚脂・油の中でゆっくり加熱する調理法。組織を壊さず旨みを引き出し、しっとりした食感になる。元来は保存技術で、脂ごと密封し数ヶ月保存できた。

鴨腿肉のコンフィが最も有名。鴨砂肝・豚ばら・フォワグラのコンフィも古典的。現代のスービードはこの技法の系譜を受け継ぐ。

Coq au Vin
コック・オ・ヴァン
料理
起源 フランス農村部の伝統料理。エスコフィエが格上げ・体系化

鶏をブルゴーニュ赤ワイン・ラルドン・マッシュルーム・パールオニオンと煮込む郷土料理。古典フレンチの「家庭料理を格上げした」代表的一皿。

Crème Brûlée
クレームブリュレ
料理
初出文献 1691年 / フランソワ・マシャロの料理書(1691年)

バニラカスタードの上に薄い砂糖を焦がしたパリパリのカラメル層。スプーンでパリッと割る演出も含めた古典デザート。1691年の料理書に初出記録。

Pithiviers
ピティヴィエ
料理
起源 ロワール地方ピティヴィエ市(甘菓子版)/ 料理版は古典フレンチで発展

フィユタージュ(パイ生地)に包んだフォワグラ・トリュフの円形パイ料理。晩餐会の格式ある一皿。甘菓子版はアーモンドクリーム入りで同名。

Sauce Bordelaise
ボルドレーズソース
ソース
起源 ボルドー地方の名産赤ワインと骨髄を用いた古典ソース

ボルドー赤ワイン・エシャロット・ドゥミグラスのブラウンソースに牛骨髄(moelle)を加える。骨髄のコクが牛肉の旨みを最大化。ステーキ・アントルコートに欠かせない古典的組み合わせ。

Pot-au-Feu
ポト・フー
料理
起源 フランス農村部の伝統。「鍋を火にかける(pot au feu)」がそのまま料理名に

牛の各部位・骨髄骨と野菜を長時間煮込むフランスの国民的料理。スープと肉野菜を別皿で供する。三ツ星シェフも「最高のポト・フー」を生涯の目標とするフランス料理の根幹。

Sauce Nantua
ナンチュアソース
ソース
起源 フランス・アン県ナンチュア(ザリガニの名産地)/ エスコフィエが体系化

ザリガニの殻をコニャック・クリームで煮出しザリガニバターで仕上げたサーモン色のソース。クネル・淡水魚・卵料理の古典ソース。

Galantine
ガランティーヌ
技法
起源 14〜15世紀フランス / 中世の「galantine」が語源

骨抜きの鶏・鴨などにファルスを詰め布巾で巻いてポシェ、冷製で供する。美しい断面が特徴。テリーヌとの違いは型を使わず皮を型にする点。ビュッフェの花形。

Soufflé
スフレ
技法
初出文献 1742年 / ヴァンサン・ラ・シャペルの料理書(デザート版)

メレンゲをベースに折り込んでオーブンで焼き型から膨らませる。焼き上がりから2〜3分以内に提供必須。古典的美食のセレモニー的一皿。

料理スフレ(チーズ・ウニ等)とデザートスフレ(チョコレート・グランマルニエ等)の2種。

Sauce Périgueux
ペリゴーソース
ソース
系統 フランス古典料理・ペリゴール地方発祥

デミグラスにトリュフと白トリュフオイルを加えた黒いソース。トリュフの香りと味わいが特徴。ロースト肉、特にジビエとの相性が優秀。

Sauce Mousseline
ムーセリーヌソース
ソース
系統 フランス古典パティスリー技法

オランデーズソースに生クリームをフォーレして軽く仕上げたソース。ふわふわで優雅。アスパラガスやポワッシェなど野菜・卵料理と好相性。

Sauce Mornay
モルネーソース
ソース
系統 フランス古典料理

ベシャメルソースにグリュイエールチーズを加えたクリームソース。グラタンやクロケットの基本ソース。チーズの香りが心地よい。

Julienne
ジュリエンヌ
技法
系統 フランス古典料理技法

野菜を細い棒状に切る技法。フレンチの基本カット。スープ、サラダ、付け合わせに使用される。

Brunoise
ブリュノワーズ
技法
系統 フランス古典料理技法

野菜を極小のサイコロ状に切る技法。ジュリエンヌよりさらに細かく、ダイスカット。

Chiffonade
シフォナード
技法
系統 フランス古典料理技法

葉物野菜を細い千切りにする技法。ほうれん草やレタスなどを手早く切り、エレガントな食感を作る。

Sous Vide
スー・ヴィード
技法
系統 フランス現代調理法(古典との融合)

真空密閉パックで湯煎する加熱法。温度管理が極めて正確で、肉や魚を完全な火入れで調理できる。

Basse Température
バス・テンペラチュール
技法
系統 フランス現代調理法

低温での加熱法。肉の繊維を壊さず、旨み成分を逃さない。古典フレンチの『柔らかく仕上げる』という理想を現代的に実現した。

Pocher
ポッシェ
技法
系統 フランス古典料理技法

静かに熱した液体で加熱する調理法。水、ブイヨン、ワインなどで肉や魚を優しく火入れする。

Braiser
ブレゼ
技法
系統 フランス古典料理技法

焼き色をつけた食材を液体で蒸し焼きにする調理法。牛肉の塊やニンジン、玉ねぎなどに用いられる。

Glacer
グラセ
技法
系統 フランス古典料理技法

ブイヨンを煮詰めて粘度を高め、食材に艶やかな光沢を与える仕上げ技法。ニンジン、玉ねぎなどの付け合わせに用いられる。

Chinois
シノワ
道具
系統 フランス古典厨房器具

とんがり帽子のような形の細目ザル。古典フレンチの厨房必須道具。ソースやブイヨンを濾して滑らかにする。

Mandoline
マンドリン
道具
系統 フランス古典厨房器具

野菜を均一に薄切りにする手動スライサー。ジャガイモ、大根などをすばやく切れる。

Bain-Marie
湯煎
道具
系統 フランス古典厨房技法

大きな容器に熱湯を張り、その中に別の容器を入れて間接加熱する方法。ソース、クリーム、チョコレートなど温度管理が必要な食材に用いられる。

Tamis
タミ
道具
系統 フランス古典厨房器具

広く浅い金属製のふるい。粉砂糖をかけたり、裏ごしたりするのに用いられる。

Robot Coupe
ロボクープ
道具
系統 フランス現代厨房機器

フードプロセッサーの高級版。古典料理では上級シェフが導入を開始したが、伝統的には使用しない。ペースト・ムース類の製造を高速化。

Bouillabaisse
ブイヤベース
料理
起源 フランス・プロヴァンス地方

プロヴァンス発祥の魚のスープ。様々な地中海の白身魚をサフランで煮詰める。ルイユとクルトン、フェンネルの香りが特徴。

Cassoulet
カスレ
料理
起源 フランス・オクシタニア地方

白インゲン豆と豚肉をゆっくり煮込んだ、フランス南西部の郷土料理。濃厚でコクがあり、冬の定番。

Blanquette
ブランケット
料理
起源 フランス古典料理

仔牛や鶏肉を白いブイヨンで煮込んだ古典的なシチュー。卵黄とクリームで仕上げた白いソースが特徴。

Quenelle
クネル
料理
起源 フランス古典料理・ムース系

フィッシュムースをポーションとして楕円形に成形し、スープに浮かせた料理。肌理細かく優雅で、古典パティスリーの技術が詰まった一品。

Feuilletage
フイヤタージュ
パティスリー
起源 フランス古典パティスリー

バターを何度も折り込んで層を作ったパイ生地。数百層に達する場合も。軽く、パリパリとした食感が特徴。古典パティスリーの最高峰技術。

Crème Pâtissière
クレーム・パティスィエール
パティスリー
起源 フランス古典パティスリー

牛乳に卵黄と砂糖、小麦粉を加えて火入れしたクリーム。ケーキや色々なお菓子の詰め物に使う。古典パティスリーの基本。

Pâte à Choux
シュー生地
パティスリー
起源 フランス古典パティスリー

バター、水、小麦粉、卵で作る特殊な生地。焼くと膨張して空洞ができる。エクレア、シューアラクリーム、グジェールの素。

Pâte Brisée
パート・ブリゼ
パティスリー
起源 フランス古典パティスリー

砂糖を含まない塩辛いタルト生地。バターと小麦粉を指でなじませて作る。塩辛いお菓子やキッシュに使用。

Pâte Sucrée
パート・シュクレ
パティスリー
起源 フランス古典パティスリー

砂糖を含む甘いタルト生地。バター、小麦粉、砂糖、卵黄で作られ、フルーツタルトやフランボワーズタルトの土台。

Génoise
ジェノワーズ
パティスリー
起源 フランス古典パティスリー

全卵を湯煎で温めながら泡立てた、古典的なスポンジケーキ。バターを少量加えることで風味としっとり感を出す。

Dacquoise
ダックワーズ
パティスリー
起源 フランス古典パティスリー

メレンゲにナッツの粉を加えた焼き菓子。アーモンド、ヘーゼルナッツ、ピスタチオなど様々なバリエーション。層状に積み重ねてケーキの台に。

Nougatine
ヌガティーヌ
パティスリー
起源 フランス古典パティスリー

砂糖をキャラメル化し、ナッツを加えた脆い焼き菓子。冷ます前に形作られ、フィナンシェやパイの装飾に使われる。

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